ギャンブル依存と脳科学

はじめまして、京都大学にてギャンブル依存症の脳画像研究を行っている精神科医の鶴身孝介と申します。

2015年9月4日 コメントする

第一回 自己紹介

はじめまして、京都大学にてギャンブル依存症の脳画像研究を行っている精神科医の鶴身孝介と申します。このたび、御縁あってブログを書かせていただくこととなりました。どうぞよろしくお願い致します。

日本では依存症を専門とする精神科医は少なく、その中でもギャンブル依存症を専門にしている者は数えるほどしかいません。さらにその中で脳画像の研究をやっている者は今の所、日本では僕たちだけです。言わば、隙間産業オブ隙間産業といった感じです。

今回は僕がなぜこの研究をやることになったかの経緯を中心に自己紹介がてら書かせていただきたいと思います。

京都大学には「空から単位が降ってくる」という都市伝説があり、僕が大学生だった頃はあまり大学に行かなくても進級できる牧歌的な風土がまだまだ残っていました。そのような環境で向学心を継続して保てる人間は一握りであり、僕はとても一握りに入れるような種類の人間ではなく、音楽サークルにうつつを抜かすなどしておりました。五回生になり病院実習が始まると、大学にようやく継続的に顔を出すようになりました。全ての科を回りましたが、一生の仕事にしたいと思える科があまりありませんでした。そのような中で、何故か精神科には興味を惹かれました。

そんなわけで京大精神科に入局し、大学病院で研修医生活を終えた後、福井県南部の基幹病院である杉田玄白記念公立小浜病院に赴任しました。当初は精神科の中でもマイナーな分野である依存症にそこまで興味を持てませんでしたが、外来の熱心な看護師さんや今も一緒に研究を行っている仲間の医師に依存症の道に誘われたことが転機となりました。ほどなくしてAAのイベントに連れて行ってもらい「依存症の人たちがこんなに気持ちよく回復していくんや!」と感銘を受けたあたりから依存症について学んでいきたいという気持ちが強くなり、院内で行われていたAAミーティングに毎週出席するようになりました。AAミーティングは医局会とたまたま同じ曜日の同じ時間にあり、退屈な医局会を合法的にサボる格好の言い訳にもなりました。

その後、依存症の治療について勉強していくうちに「治療プログラムをうちの病院にも作れたらいいなぁ」と思うようになりました。そういう目で学会に参加していると次第に独りよがりでやってきた自分には決定的に欠けているものに気が付きました。脳について全くと言っていいほど勉強してこなかったのです。

そんなある日、教授から「ギャンブル依存症の脳画像研究のプロジェクトが始まるから大学院に戻ってこないか」とのお誘いがありました。不真面目な学生であった自分が研究をするなんて、それまで考えたこともなかったですし、7年間にわたり地域医療にどっぷり浸かっていましたのでガラッと環境が変わることに少々不安もありました。しかし、その時の自分に一番必要なものが得られそうだと思いましたし、面白そうだったので大学院に遅い進学をすることにしました。いい歳をしたオッサンになって学生証を提示して学割で映画を観たり出来るという生活にも惹かれる所もありました。

大学院に進学したものの、患者さんにどこから来ていただいて実験を進めるかは全く白紙の状態で、教授には「患者さん連れて来られなかったら依存症のプロジェクトは中止やで~」とのショッキングなお言葉をいただきました。依存症の研究が出来ないなら、何のために大学院に帰ってきたのかわかりません。そういうわけで色々とがむしゃらに動き回りました。その中で、学会で出会ったとある先生が間に入って下さり、セレニティーパーク・ジャパンさんをご紹介いただいて全面的にご協力いただき、研究を軌道に乗せることが出来ました。

そこから研究につきものの紆余曲折もありましたが、昨年ようやく成果の一部を形にすることが出来ました。今年の三月で大学院は修了しましたが、もうしばらくこの研究を続けたいと思い大学に残らせてもらっております。

そんなこんなで深夜のお笑い番組鑑賞やホットヨガを趣味にしつつ、半分学生に戻ったような感じで研究と臨床をボチボチとこなしている今日この頃です。

こんな僕ですがどうぞよろしくお願い致します。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

top

-->