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- 私たちにも助けが必要だった~依存症問題を抱えたご家族の物語~
2016.03.01
回復への道は遠かった~親子で悪循環から抜け出した記録~ 佐々ケイ(第四回)
「視野が狭くなって…」
真夜中のこと。2人の男性が玄関口に立っていました。その背後に息子の姿が見えます。
「息子さんが、うちの店で飲んだ飲食代が払えないということで、自宅で払ってもらいましょうか」「えっ?」 突然のことで声が出ません。
男たちは細身のスーツをびしっと決めたビジネスマン風でした。差し出された伝票には16万円也。内訳はバーボン数本とか、へえ~、どんな計算の仕方をしたのか? 売り上げを回収するために、大阪の店から息子を乗せたまま、60キロを走ってきた、ということでしょうか。
「そんなお金、わが家にはありません!」と強く言うと、やがて男たちは息子の背中を押して立ち去りました。車の走り去る音が聞こえました。
翌朝、クリニックの臨床心理士に相談しました。「絶対に電話に出てはいけません。助けるとまた、同じことの繰り返しになります」。”ピンチはチャンス”にしょうというのは私にもわかっていました。
しかし、その日から電話が鳴りっぱなしになりました。息子は閉じ込められているのではないか。どうしょう? ”電話に出てはいけません”と注意されていたのに、つい受話器を取ると息子の声が聞こえました。電話を切る、鳴るの繰り返し。電話の差し込み口も抜きました。
2晩持ちこたえたものの、もはや、これまでと代金を払ってしまいました。
今、思うと、何故、このとき警察に相談しなかったのか、ということです。手元に伝票もあり、店名もわかっている、それを大阪の警察署に伝えて、警官に任せる、という発想が全く浮かばなかったのが不思議です。
極端に視野が狭くなり、「電話に出ない」だけがすべてであり、他には何も頭に浮かんでこなかったのです。そして、誰かに情況を話すことも忘れていました。依存症、共依存とは、頭の中まで占領されてしまうものなんでしょうか。
(つづく)
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